軽井沢野鳥の森でネイチャーウォッチングとツキノワグマの実態

軽井沢でNPO法人ピッキオ主催の

「野鳥の森ネイチャーウォッチング」

に参加してきました。

ピッキオとは?

イタリア語でキツツキという意味だそう。


森の価値を高めるために、

私たち人間と他の動植物との出会いを

楽しいものにする。

そんな活動をされています。



初めての双眼鏡。

鳥を見失ってしまったりレンズが曇ったりで

まだまだ練習が必要ですが

個体が良く見えると楽しさが増しますね。


双眼鏡も図鑑もレンタルできますので

ぜひ活用しましょう。



スタートはケラ池から。

スケートリンクが出来ていますが

この部分は下から冷やしているのだそう。



周りはまだ天然の氷を生成中でした。

冬休みに間に合うといいですね。



遠くに見える浅間山は活火山。

うっすら煙が出ています。


ここは火口から約8km。

時々発生する小規模噴火で

警報が出るのは4kmまで。

その倍の距離あるというのは

少し安心材料になりますね。



地面には火山の噴火物、軽石がたくさん。


書物で確認できる浅間山の大噴火は

過去2000年で3回ほど。

686年(飛鳥時代)

1108年(平安時代)

1783年(江戸時代)


この先数百年は問題無いことを祈って。



野鳥の森は国有林で

誰でも自由に散策することが出来ます。


ネイチャーツアーでなくても、

散歩で来ている人たちもいました。



向かって左が国有林、

右側は谷を挟んで星野エリアです。


以前は材木用に管理してきたカラマツ林でしたが

今では野鳥が生息しやすい環境作りのため

カラマツの間伐後はこの地に元々育っていたはずの

広葉樹を育ているそうです。



野鳥の森に限らず

実は軽井沢一帯は浅間山を中心とした

「鳥獣保護区」となっています。


地図を見ると軽井沢駅の近くまで、

旧軽銀座の周辺も含めて!鳥獣保護区です。

つまり、人と野生生物の暮らしが重なっている。

大丈夫なのでしょうか・・?



野鳥の森を歩き始めると

早速何かを発見。

木に穴が開いています。



拡大してみると、キツツキが作った巣穴。


ただしキツツキは新しい巣穴しか使わないそうで

出ていった後は別の鳥たちに再利用され

だんだんと穴も大きくなり

しまいにはフクロウなんかも利用するのだとか。

無駄がありません。


 


地面に防水シートを敷いて出来た池。

池に沈んだ木の陰に
カエルがじっとしていました。

冬は水温に合わせて体温が下がり
その分代謝も低くなるため
水中でも皮膚呼吸だけで生きられるのだそう。

カエルは鳥類も含めて
多くの生き物のエサになる生き物。

彼らの戦略はとにかくたくさんの卵を産むこと。
その数一度に1000個以上と言われており、
実際に数えたスタッフさんがいたそう。
さすがプロです。



野鳥の森というだけあって

鳥たちの鳴き声はたくさん聞こえるのですが

高い木々の上を移動しているので

見つけるのは中々大変。



ということでエサやり場が登場です。


バードウォッチングの本場イギリスでは

エサを置いて訪れて来る鳥を楽しむのが一般的ですが


野生生物への干渉はなるべく避けたいところ。


ピッキオのスタッフさんたちは

冬のエサが少なくなる時期に限り

数時間以内に食べ終えられる分量を

与えているということでした。



エサ台には一度に一羽のみ。

ケンカにならないよう、

タイミングをずらしていました。



台の上で食べ始めることはなく

エサを掴んだら一目散に

ひとり落ち着ける場所へ行き

ようやくご飯タイムです。



この時にいたのは

コナガやシジュウカラ、

ゴジュウカラなどの混群。


種は異なるけれど

似た者同士でエサのある場所を共有することで

多くの食糧を得ることが出来る。


仲間と一緒にいた方が

天敵が来たときに

自分が狙われる確率を下げることが出来る。


賢いですね。



多くの夜行性の動物たちには会えませんでしたが

けものみち沿いにセンサーがあり

通った動物たちを映像で見せて頂きました。


イノシシやシカ、サル、カモシカ、クマなど

様々な生き物がこの道を通ります。



こちらはウワミズザクラというサクラの木。

ツキノワグマの大好物で

上の方に点々と穴が開いているのが

木登りした際に残ったであろう爪痕です。


ツキノワグマは凶暴そうなイメージがありましたが

実はとても臆病な性格なのだそう。



エサは新芽や木の実を中心にハチの巣や昆虫類

時々罠にかかったシカなどを食べ

聞く限り優秀なハンターではなさそうです。


人間がいても、本来であれば

クマの方から逃げていくはずだとスタッフさん。



ところが毎年、

人間がクマに襲われる事故が絶えません。


どんな状況だったのかはわかりませんが

元来臆病な性格のクマです。

彼らにとっても事故だったのではないかと

思わずにはいられません。


人を襲ってしまった場合でなくても、

人が暮らす場所に出てしまい

害を与える可能性があると判断されれば

捕獲後、薬殺となります。


こうして人の手で個体数を減らし続け

IUCN(国際自然保護連合)と環境省で

それぞれの位置づけは異なりますが

今ではツキノワグマは絶滅危惧種です。


特に数が少ないのが四国で十数頭。

九州では既に絶滅してしまったのだそう。


実は今年鹿児島県を訪れた際、

何気なく地元の方とこんな会話をしました。


「この辺でクマは出ますか?」

「クマはいないよ!」


なぜクマがいないと言い切れるのか

不思議だったのですが

そういうことだったのかとつながりました。。



人間とツキノワグマの共生に向けて

最近注目を集めているのがベアドッグだそう。


ベアドッグは

クマを見つけるのが得意で

吠えたてながら森の奥へと追い払ったり


人里であればクマを木の上に追い詰め

ガンガン吠え続けることで怯えさせ

人間がいる場所は来てはいけない怖い場所だと

クマに学習させることが出来るのだそう。


お互いにびっくりして事故を起こさないためにも

人間の都合でクマを絶滅させてしまわないためにも

クマたちに人間との境界線を認識してもらう作戦です。



元々野生生物が多い場所に

重ねるようにして人間が暮らしており

境界線はあってないようなものですが

ベアドッグ作戦、うまくいってほしいですね。



よく見るとヤドリギ。オレンジ色の実です。


クマの方からすれば

人間がカラマツ林になんてするから、

エサが無くて探し回っているんだよ!と

文句の一つも言いたくなるだろうなと思っていたら


地元の小学生が集めたどんぐりを育てて

森へ返す活動が30年ほど続いているそう。


軽井沢では、少しずつですが、着実に、

人間とツキノワグマの共生に向けて

進んでいるように感じました。



参考

  • 絶滅危惧種の取扱い

    • IUCNではツキノワグマ自体を Vulnerable (VU)としている。
    • 環境省では下北半島、西中国地域、東中国地域、紀伊半島、四国山地の各地域のツキノワグマを、絶滅の恐れがある地域個体群(LP)としている。

  • 本「ツキノワグマのすべて」

  • 本「クマが出た!助けてベアドッグ」