世界自然遺産!西表島に行く前に知ってほしいこと

生命力溢れる西表島では

歩いているだけで様々な生き物と出会います。


通りすがりに会うだけであればいいのですが、

近年交通事故に遭遇するヤマネコが

後を絶たないそうです。

イリオモテヤマネコのヨン

そして事故が起きてもすぐに救出されず、

後から誰かが発見し、

通報しても時すでに遅し・・というパターン。


写真は奇跡的に助けられたヤマネコですが、

事故で後遺症が残り、

野生に返すことは出来なかったそう。


生涯を保護センターで送り、

ヤマネコの研究に貢献してくれたのでした。


ロードキル注意喚起の看板

島で行われている事故対策としては、

道路に注意喚起を促す看板を置いたり

島内は時速40km以下

島内は時速40km以下に制限されています。


ゆっくり走っていれば

万が一の時も軽症で済むかもしれない。

すぐに救出出来れば、

命は助かるかもしれない。

ということですね。


他にも、

道路を通らずに済むようトンネルを用意したり

車の振動が伝わる工夫がされていましたが、

野生生物保護センターによると、

件数は減るどころか増えています。


イリオモテヤマネコのロードキル件数


2020年は外出自粛で一時的に減ったそうですが、

2021年現在、また増えてきていると。


島内の推定個体数が100匹程度と、

絶滅の危機にあるのに、

たった一年間で、その約1割を、

人間が直接的に命を奪っている。


とても悲しいですが事実です。


イリオモテヤマネコのロードキル発生場所


事故の多くは、海岸沿いの県道で起きています。

山奥もヤマネコの生活圏だそうですが、

平地の集落周辺を好むようで、

人々の暮らす場所と重複しています。


最近はヤマネコの方が、

車に慣れてきている可能性も指摘されています。


自分でエサを狩るのではなく、

道路ではねられた動物を食べにやってきて

エサを食べている最中にはねられてしまうことも。


ヤマネコはエサを捕まえたら

その場で食べる習性があるためだそうです。


イリオモテヤマネコを模した注意喚起の看板


増え続けるロードキル問題は

もしかすると観光客の増加によるものなのか?

心配になりますよね。


ヤマネコパトロールで夜間走行している車の

速度データを集めたところ、

観光で来た車は、ヤマネコに会いたいがためか、

比較的ゆっくり走っていたのだそう。


だからといって安心は出来ませんが、

こうしたデータを積み重ねて、

有効な対策を立てられるといいですよね。


そして万が一、

ヤマネコの交通事故に遭遇してしまったら、

故意でなければ罪に問われない

とのことですので、

早急にヤマネコ緊急ダイヤル(0980-85-5581)

に連絡をとのことでした。


イリオモテヤマネコとの共生のために


このロードキルは

世界自然遺産登録の際にも問題となり

候補地の評価を行うIUCN

(The International Union for Conservation of Nature)

からは、2022年12月1日までに対応し、

その結果を報告せよと勧告を受けています。


つまり、条件付きで世界遺産登録された、

という状態です。


5. Requests the State Party to take immediate steps to improve the protection and management of the property, including by: 

a) Capping or reducing levels of tourist visitation from current levels, especially on Iriomote Island, until a critical evaluation of tourism carrying capacity and impacts can be conducted and integrated into a revised tourism management plan,  

b) Urgently reviewing the effectiveness and strengthening if necessary the traffic management measures designed to reduce road fatalities of endangered species (including but not limited to Amami Rabbit, Iriomote Cat, and Okinawa Rail) 


勧告文を見ると、ロードキルに加えて

観光客数が許容量を超えている

という指摘も入っています。

西表島入域観光客数

竹富町は過去10年の平年値から、年間約33万人、

上下1割で年間30~36万人を基準と設定したようです。

そのコントロールがどこまで出来るか、

効果が出るかなど、

これから試されることになります。


4.4 Community 

IUCN received a number of letters stating that public consultation and consent had not been adequate, particularly on Iriomote Island, and there still seem to be a number of residents on Iriomote opposed to inscription. Based on the inputs from two field missions, and the exchanges with the State Party, IUCN considers that there is acceptable evidence of community support for the nomination, noting that there will be a continued need for the State Party to engage with and support local communities, and to listen to and respond on any issues that are raised.


そして最も気になったのが、

コミュニティに関する勧告文。


IUCNは多くの地域住民から反対の声を聞いており、

十分な説明を受けていないとの手紙が多数届いていると。


西表島の地域住民は

2020年12月末時点でたった2428人。

時期によっては観光客の増加で水不足になるなど、

生活に支障をきたします。


島の恵みは無限ではない。ということを、

自然を大切にしてきた島の人々だからこそ

身に染みてわかっているのではないでしょうか。


現時点では改善されているかもしれませんが、

計画を立てるだけでなく、

ぜひ対話を通して、

島の人々にとっても

納得のいく形で進めてほしいですね。


熱帯の植物


観光客の立場にある私たち一人ひとりも


訪れる際はピークシーズンを避けたり、

水に限らず、資源を無駄に使わない、

島で気を付けるべきことを聞いて守る、

こうした問題に興味を持つなど、


少しずつでも出来ることはあります。


以前ある環境活動家の方が仰っていたこと。


大きく見える問題も、

一人ひとりの意識や行動の積み重ねで起きている。


ならば、どんなに小さく見えたとしても、

一人ひとりの意識や行動に変化を起こすことが大事だと。


西表島の問題に関しても、同じように感じました。



参考

西表野生生物保護センター

認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金によるICUN勧告文抜粋

認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金によるイリオモテヤマネコ保全活動

竹富町西表島部会 令和2年1月「持続可能な西表島のための来訪者管理基本計画」

竹富町竹富町入域観光客数

竹富町人口動態